輿水健治 教授
埼玉医科大学総合医療センター救急科
診療部長 輿水健治
救急医療の原点は? と問われれば、私は「目の前に病める人がいればいつでも手を差し伸べる」と答えます。

こんな私の救急医療の出発点は1984年、小さな救急病院でした。病床は50床ほどで、手術室は1つでしたが、年間の救急車受け入れ件数はおおよそ3,000件で、脳外科、外科、整形外科領域の緊急手術を夜中にもしていました。医者になって4年目でしたが、先輩から指導を受けながら、脳出血や急性腹症、様々な外傷患者の手術をしていました。救急医療体制が整い、医療レベルが向上した現在ではありえないことでしょう。

そんな私が目指しているのが、シームレスな救急医療です。当院は高度救命救急センター、小児救命救急センター、総合周産期母子医療センターを持ち、あらゆる専門分野の診療科があります。その窓口となって救急患者を受け入れる体制を整えることです。今はまだまだその入り口に立ったくらいですが、目標に到達できるよう努力しているところです。

現在、私たちはドクターヘリや救急ワークステーション方式によるドクターカーを活用した病院前救急医療を始め、ER・高度救命救急センターでの外傷患者を中心とした初期診療、中毒や重症内因性疾患の初期診療に従事しています。また、高度救命救急センターでは中毒や重症内因性患者の主治医となり、状態が安定後は各診療科や関連病院との橋渡しをしています。

当科のスタッフは、麻酔科、精神科、小児科、脳外科、救急医と出発点は様々で、病院内での診療に従事する傍ら、ドクターヘリによる病院前医療体制の整備、災害医療、精神科救急の普及、あるいは小中学校での蘇生教育普及などに携わり、それぞれ充実したキャリア形成をしています。また、初期研修修了後に当科に入った若手医師の中には、救急科専門医を取得した後、それぞれ集中治療、外傷外科あるいは地域医療へと巣立っていった者もいます。

専門職として救急医を志す人は勿論、総合医や内科医などの短期間研修も可能です。救急医療の原点に興味がある方は是非仲間に入りませんか。

埼玉医科大学総合医療センター救急科
診療部長 輿水健治